大高霧海主宰「風の道」5月号より
ーー現代俳句月評ーー 筆者・佐藤一星
「俳句四季」三月号掲載作品。二月の最初の午の日が初午で稲荷社では午祭りが行われる。この起源は京都の伏見稲荷大社の創立記念日とのことで、和銅四年(711年)からというから古い習わしである。
五穀豊穣、家内安全、商売繁盛と広く願い、稲荷寿司や油揚げ、米などを奉納する。稲荷神社の稲荷は、稲生り(いねなり)からの言葉で、初午の日は農作業の始まる日と言われる。
掲句の「刃物」は、農具の刃であろろう。丁寧に研ぎ上げた刃に、二月の澄んだ青空と白い浮雲も映っている。辺りの空気は清列でまだ冷たい。怜悧という語が頭に浮かび緊張感の漂う作品である。