紙面には不穏の誤植遠き火事    井口時男

誤植を見つけた時の驚きはこんな感じだろうと思う。もう取り返しがつかないだけでも顔面蒼白の事態なのだが、その誤植の文字がとんでもない無いように変転していたりして驚くのだ。この句のように述べられると、遠い火事は単なる視覚のものではなくなる。

句集の後半には何篇かの俳論があり、自作を語っている。ーーすべて嘱目である。俳句はなるべく嘱目性を踏まえるべきだと思っている。17音の短詩が世界の多様性との接触を保持するにはそれしかない。(随想より)ーー

井口時男句集『天來の独楽』  2015年 深夜叢書

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