春ショール靡かせ鳥になる途中    山元志津香

風の中の春ショールのはためく場面はなんとなく物語めく。そういえばこの句集の題名『木綿の女』も句集と言うより小説の題名のようである。

掲出句は風の中の春ショールのはためく場面を(鳥になる途中)ということばに置いた。ショールが風になびいて鳥のようだ、というならごく常套的な場面のまま終わってしまうが、鳥になる途中と言ったことで、一句の奥行は無限に広がってゆく。

句集に(成行きにまかす残年新樹晴)のような老いを読むこともあるが、総じて暗さよりは華やかさを感じさせる句集である。

秋彼岸帰路の双手のさみしくて
泡立草はしやぎ過ぎしと思ふ帰路
螺旋階段がんがん行くは寒九郎
水ごくごく飲んで月下の氷柱となる

山元志津香句集『木綿の女』  2015年 文学の森

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