月山の石に秋暑の影走る   鈴木貴水

一句は出羽三山の一つである月山の山中で得たものであろう。夏スキーもできるという月山はなだらかな稜線を得て、登山者にもゆったりと視界を広げられる山である。その山中の石に、折々影が走る。

鳥なのか、トンボなのか、あるいは雲の影なのか。音もない影は形を見極められないまま通り過ぎてゆく。その影に秋暑の季語を被せることで、影の存在感が鮮烈になった。同句集には(新涼や光りて走る水の音)というのもある。どちらも形無きものを走らせながら形が作られていく。句集『雲よ』 2013年 北溟社  (岩淵喜代子)

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