『新俳人探訪』   栗林 浩   2014年9月 文學の森

栗林氏の『俳人探訪』は、『続俳人探訪』『続々俳人探訪』と、すでに三巻出ている。今回の書をあえて『新俳人探訪』とした意には触れていないが、興味本位ではなく作家を追いたいという意志が書き込まれている。そのあたりに、『俳人探訪』の意気込みや姿勢を感じる。

目次

1・京極杞陽―その作品と人
2・下田実花―新橋の名妓にして俳人(山口誓子の妹)
3・佐藤鬼房と3・11―俳句の力(鬼房の風土俳句と東日本大震災)
4・悲劇の俳人とテキスト論
5・中谷寛章―夭折の俳論者・影の運動家
6・永遠の童女―柿本多映(名刹三井寺、その環境と多映の俳句)
7・文挟夫佐恵の『白駒』を読んで

8・短編集として
8-1糸大八句集『白桃』を読んで
8-2秋山真之
8-3中村草田男(俳句作家へのアプローチ)
8-4松本たかし想望
8-5村越化石さんのこと

九・巻末に「私の写生論」

氏の文章には情熱を感じる。要するに興味を持った作家を追う情熱なのだと思う。しかし、その自分の情熱に対して面映ゆさを感じて、後書きに登場させた俳人の多色さ述べ、節操を欠いているのではと自戒している。しかし、文章、ことに評伝や評論は書く対象の作家に情熱を感じるところから、書く一歩があるのだ。そうでなければ、読者にとっても面白くない。今回の栗原氏の一書は、作者の情熱が読ませる弾みになっていて、一気に読み通すことができた。

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