針山に休める針や冬の雨    利普苑るな

針山に休める針や冬の雨    利普苑るな

針山とは、縫い針や待ち針を刺しておくもので、裁縫箱の中の主役かもしれない。使用するときにはそこから抜いて、用が済めば針山に戻しておく。たしかに、針山にある針というのは休んでいる針である。その提示によって、針山を中心に据えた日常の景が広がり、さらにそれらの背景として冬雨の戸外の景が広がってゆく。
針山に休んでいる針、という措辞を選んだとき、作者の視野には針のようにきらきらする冬雨が見えていたのだろう。利普苑るな氏の作品は「ユダの如く歩みて木の実時雨かな」「名画座の隣は八百屋しぐれ来る」など何気ない風景を非日常へ置き換える冴えが快い。(利普苑るな第一句集『舵』・2014年9月 邑書林)

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