折井紀衣第三句集『石の眼』 2014年6月 文学の森

はじめから花の混み合ふシクラメン
春風に置かれてありぬ筐かな
菜の花の黄なり騙されやすきかな
止まれば揺るる木の橋冬の鳶
てのひらの乾きコスモス遠くまで
夕顔の花のひとつが初めなり
夏休み遠くに川の流れをり

「椎」主宰原田喬に師事。2000年9月より俳句誌「木の中」創刊。

宗教観を感じるような静寂さがある。その静かな視点で花が見詰められ、春風を物のように捉えている。三句目の菜の花の黄いろ、そこへぶつける言葉が(騙されやすき)である。黄から一気に騙されるという展開が、もういちど菜の花の黄いろを鮮やかにする。
なかでも、句集を特長付けている静寂感の際立つ句が(夏休み遠くに川の流れをり)である。

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