岸本尚毅句集『小』 2014年  角川学芸出版

猫のごとく色さまざまな浅利かな
夏楽し蟻の頭を蟻が踏み
目のふちに水の来てゐる秋の蛇
湯たんぽの重たく音もなかりけり
一つかみ虚空に豆を打ちにけり
うす暗く花粉の多き春なりし
紫陽花と百合向ひ合ふ月夜かな
涼しさや水の中なる鯉に雨
草摘のスカート草にのつてをり

俳句という表現方法を信じて貫いている、と感じさせる作家である。
それは、何が?と思わせる日常の茶飯事を輝かせて提示しているからである。
浅利からの猫の連想、蟻が蟻の頭を踏むという拡大された風景、水の中の蛇の提示、湯たんぽの存在感などなど、じんわりと納得しながら読み進む句集だった。
なかでも、(ひとつかみ虚空に豆を打ちにけり)の深遠な空気に惹かれた。

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