高野ムツオ句集『萬の翅』  2013年11月  角川書店

東日本大震災を実際にうけた人たちの句集が刊行されてているが、高野氏の一書はほぼ10年の作品集。その途中で震災に出会ったわけだが、もともと重くれの作家であるから際立たない。というより、震災のことも象徴的に詠まれていることで普遍的な句集になった。

清水汲む見えぬ無数の手に添われ
雨幾夜妻を抱けば青みどろ
豆打餅そこだけ雨が上がりおり
億万の風が生みたる秋の風
初潮の目指すは唐招提寺なり
万の翅見えて来るなり虫の闇
冬の闇とは一頭の馬である
オーロラの夢見る煎餅蒲団かな
揺らす尾も鰭もなけれど春を待つ
仰向の船底に花散り止まず
万の手に押され夏潮満ちてくる
夏草や影となりても生きるべし
蘆鳴れり一本ごとにいっせいに

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