宮本佳世乃第一句集『鳥飛ぶ仕組み』 2012年12月  現代俳句協会

八月の数字の跡の残りたる
鳩の目の離れてゐたり花の雨
春の炉の指にかぶつてゐる光
アカシアの花どこまでも手を振つて
一月の電気に紐のぶら下がる
冬めきて英和辞典にゐる家鴨
冬眠の前にさびしくなつておく
ペンギンは瞼を閉ぢて夜の火事

1974年生、「炎環」「豆の木」所属。第一句集と呼ぶにふさわしいナイーブナ句集である。詠まれている光景は日常の誰にでも見えているもの。それが作者の感覚で組み合わされた季語によって不思議な空間をつくりだすのだ。

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