『超新撰21』 2010年12月刊 邑書林刊

以前の『新撰21』の続編というべきなのか。あとがきによると、今まで見えにくかった20代から40代を照射しようとしているようである。多様な作り手を一つの尺度では計れない。各氏の中から私の視野に輪郭を持って飛び込んできた一句を並べてみた。観念的な句が多いし、知を持って鑑賞しなければならない句は避けた。

  海辺に打ち上がる妻たちの午後   種田スガル
  沖まで来よスイートピーにむせながら   小川楓子
  ヨットゆくなかに動かぬヨットあり   大谷弘至
  空を飛ぶやうに泳ぎて島暮らし   篠崎央子
  蒲公英のまわりの濡れている市場   田島健一
  緑陰へ運ばれてゆく銀の盆   明隅礼子
  納豆の絲伸ぶ舟の無線室   ドゥーグルJ.リンズィー
  黒猫の影も黒ねこ日の盛り   牛田修嗣
  受話器冷たしピザの生地うすくせよ   榮 猿丸
  月光の地下に柱のありにけり   小野祐三
  
  一生にまぶた一枚玉椿   山田耕司
  春の夜に釘たつぷりとこぼしけり

  列車いま大緑蔭の駅に入る   男波弘志
  雑踏のあとかたもなく夕立かな   青山茂根
  うぐいすに裁かれたくもある日かな   杉山久子
  満月の夜のみ開く骨董屋   佐藤成之
  あの空も繭の内壁かもしれぬ   久野雅樹
  もう前も後ろもなくて芒原   小沢麻結

  団地からそのまゝ秋の河原まで   上田信冶
  ふくろふを商ふ店に窓がある

  一つ抜いて箸立ゆるぶ木の芽和   小川軽舟
  まはされて銀漢となる軀かな   柴田千晶
  逆光の芒をしまう道具箱   清水かおり

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