有住洋子著『儚』 2012年12月  文芸社

以前同じ出版社から『閾』というエッセイ集を上梓していて、この本はその第二集ということになるのかもしれない。しかし、今回は以前より内容が物語的だ。小説的と言ってもいい。多分、大方の人が、この内容を書けば小説になるのだろう。しかし、有住氏のシュールな筆致によって現実の世界が彼岸に置きかえられてしまう。そのために小説の漂わせる巷塵の匂いがない。『儚』はテーマであると同時に有住氏の透徹した思想でもあるのだと思う。物語を書きたいのではなく、そこにあった空気を拾いだそうとしているかのようだ。

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