佐怒賀正美句集『天樹』2012年11月   現代俳句コレクション

土器の縁より枯の世を見渡しぬ
句碑の前みな夏潮へ下りてゆく
天国の隅にも欲しや夜店の灯
天守跡まで飛び来たる落し文
仁王の目はるかに水の澄みにけり

視野に入った句を抜き出したまでのことだが、改めて読みなおすと、どの句も意外な展開へ誘いこむ。一句目の枯の世界の提示が「土器の縁より」。夏潮へ下りてゆく、その端緒が句碑の前からと区切るのもさり気ないように見えながら風景を目覚めさせている。三句目の天国と夜店、四句目の天守跡と落し文、仁王と水澄むの配合もうっかりすると通り過ぎてしまうほどさり気ないのに、気がつくと非日常なのである。

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