渋川京子第一句集『レモンの種』 2009年12月 ふらんす堂

平成九年に現代俳句新人賞を受賞している作家。その受賞作を含めて、俳句を初めてから三六年間の作品だという。すごい凝縮された年月が盛り込まれている句集である。渋川京子氏の作品は主観的な断定で世界を構築していく作風が目を引く。現代俳句協会第15回新人賞受賞者。

 鉄棒のどこを折ろうか春夕焼
 霧深し自分を寝押しするとせん
 曼珠沙華女は祭かくし持つ
 冬さくら化粧の下は洪水なり

 たとえば以上の作品の一句目の(どこを折ろうか)、二句目の(寝押し)、三句目の(祭かくし持つ)などはあまりに堂々と言われてしまったことで、思わず渋川ワールドに入りこんでしまって諾っている。

 メロン切る振子大きな時計の下
 新しき死者よりかぞえ麦の秋
 いわし雲かぞえられつつ舟に乗る
 緑陰を抜けて両袖水びたし
 白魚を掬うとき寺匂いけり

その渋川ワールドの中から透明感のある句を引き出してくると以上のような作品が浮かび上がった。このあたりが渋川氏の頂点の作品ではないかと思う。

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