一読してこの一集は自身の生涯のすべてを盛り込んでいる、自叙伝のような形になっているように見える。
襟巻の師に許されし再入門
ふたりしてひとつ年とる切炬燵
母とならねば祖母とはならず涼し
こうした句が句集の中には随所に挿入されている。これはまた、後書きによっても裏づけがなされている。育った環境から安保の時代を経て、現在の結社「藍生」二十周年を迎える感慨が胸に沁みる文章だ。
全体では独特のリズムが一句の弾みを作り魅力を発揮している。
みんな過ぎふくろふの子の眼のふたつ
花惜しむ筵をのべてたそがれて
花満ちてゆく鈴の音の湧くやうに