黒田杏子第五句集『日光月光』 2010年11月刊・角川学芸出版

一読してこの一集は自身の生涯のすべてを盛り込んでいる、自叙伝のような形になっているように見える。

襟巻の師に許されし再入門
ふたりしてひとつ年とる切炬燵
母とならねば祖母とはならず涼し

こうした句が句集の中には随所に挿入されている。これはまた、後書きによっても裏づけがなされている。育った環境から安保の時代を経て、現在の結社「藍生」二十周年を迎える感慨が胸に沁みる文章だ。
全体では独特のリズムが一句の弾みを作り魅力を発揮している。

みんな過ぎふくろふの子の眼のふたつ
花惜しむ筵をのべてたそがれて
花満ちてゆく鈴の音の湧くやうに

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