『花暦』12月号 主宰・舘岡沙緻

俳誌展望          筆者 野村えつ子

ににん 2011年夏号季刊  

□ににん集より
独活大木鬼も独りになるときか     岩淵喜代子
ジャズピアノ独身貴族といふ日焼け  長嶺千晶
夏雲溶けて坦々と独走者        木津直人
罹災後の独り吟行てふ五月       栗原良子
夏の旅果て辿りつく吾が独居      四宮暁子
橋詰のカフェに独りの夏の雨      武井伸子
小豆島独り咳く人心澄む         中村善枝

□さざん集より
冬あかねカフェテラスからチェロの音   中島外男
やすやすと揺るるつり橋青嵐       服部さやか
ひたひたと月の波動や橋涼し       浜田はるみ
基地巡る夾竹桃も核の傘         伊丹竹野子
花人にざらざら風の吹いて来る      尾崎じゅん木
街なかに船鎮座する啄木忌        須賀 薊
蕗昧増や母の背にある陽の温み    牧野洋子

 平成十二年、朝霞市にて岩淵喜代子氏により創刊。理念は「同人誌の気概ということを追求していきたい」。詩人清水哲夫氏の巻頭言「震災詩歌」は自省なき震災詩歌作品群への失望と訴えです。連戦評論は昭和初年代の草田男を論じた長嶺氏の「降る雪や、そして結婚」、寡筆だった石鼎の生活を辿る岩淵氏の「手簡自叙伝」、茂吉の〈一本道〉の綿密な読みで本質に迫る詩人田中庸介氏の「道あかあかと」、歩く人であった碧梧桐の他界までを詳述した詩人正津勉氏の「引退から急逝へ」といずれも力の籠った内容です。武井氏の掌編小説を思わせる随筆「俳句の風景」、四宮氏の連載震災地の救援活動記もあり本誌の密度の高さが感じられました。

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