守宮

雨戸をあけたら、その敷居の上にばっさと何かが落ちて来た。よく悪戯に使われるゴム製の蛇や蛙のように弾力を感じる落ち方だった。一瞬「ヤモリ」だと思った。全体が鼠いろの体長20センチのそれは、まさにゴム製品の擬似動物のようであった。だが、それがゴム製品でない証拠に「キャ」と怯んだ私が、ガラス戸を閉めたときには消えていた。

何十年も住んでいるが、家の外でも守宮を目にしたことはなかった。見たのは随分昔、江の島の休み茶屋の個室を借りたら天井に何匹もの守宮が張り付いていたのだけである。なんでこの秋も半ばを過ぎている今頃、と思ったが取りあえずは一件落着である。ところがそれから2日程経た夕べ、トイレに入ったら便器の蓋の上に以前見た守宮の何分の一かの小型の守宮が張り付いているではないか。

今度は小さいが家の中、それもトイレの蓋の上にいるので更に悲鳴を上げて退いた。その間に自動センサーが働いて蓋が開いてしまったので、守宮は縦になった蓋の裏側に隠れてしまった。夫を呼んでその蓋の裏側を確かめると、同じところに張り付いているのだった。きっと親子でどこかに住みついたのよ、と言っているうちに夫はそのちいさな守宮を摘まんで、ひよいと外へ投げた。「悪さはしない」といったが、やっぱり気持ちが悪い。お願いだから驚かせないで。

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