早く到着した仲間で、駅の周辺で一休みしてからタクシーで川崎神社へ向かった。
北越谷の今年の虫送りは朝から小降りの雨で気になっていた。昨日のような激しい降り方なら中止になるのだが、こうした降りみ降らずみはかえってじりじりしてしまった。しかし、50年ほどつづいている虫送り行事を、これまで一度も延期したことがないのだと、長老はいう。それでも、本来なら藁松明が境内いっぱいに立てかけてあるのだが、さすが、それは直前まで納屋の中に収まっていた。
待っているうちに前橋からのグループも荻窪組もやってきた。周囲の家には風除けの屋敷森が聳えていた。神社の裏手は林になっていて、外へでると小さな空き地に見知らぬ花が群れていた。小さな花野というところだ。
神事が始まってお神酒がふるまわれると、てんでに藁松明を担ぐ行列ができた。その行列の脇を歩いていると、藁松明の焔が道にぼたぼたと落ちてゆく。藁といえども近寄ると火気が顔に感じられ、まるで鉄の溶解されたもののように激しい色を見せていた。先導者が字境に竹を立ててながら進む。その竹がすべて立て終えると、松明の行列の行き着く場所になった。昔の人はこうしたことで日々を祈りながら暮らしてきたのだろう。