主宰・戸恒東人『春月』2016年4月号より

『春月』2016年4月号・主宰 戸恒東人
俳誌探訪  (181)   筆者 入江鉄人

『ににん』平成28年冬号

平成12年10月岩淵喜代子が埼玉県朝霞市で創刊。季刊。今号は創刊15周年記念特集号となっている。岩淵喜代子代表は、以前から同人誌とは各人が自分を発揮する場以上の何物でもないとしており、巻頭文の「十五周年に寄せて」においても「『ににん』は自分と向き合う場であり、散文、評論、俳句の制限なく書きたい人が書くというスタイルを続けていく」と述べている。

十五周年の記念特集としては、祝賀会のグラビアと記録のほか、岩淵代表を含む47名がそれぞれ2頁を使って詩と俳句10句と自己紹介で綴る「俳句と詩と」という贅沢な企画、そして10周年以降の各号の概要を「5年の歩み」として表形式で振り返っている。

俳句作品の発表は全ての句を兼題で詠む「ににん集」と雑詠の「さざん集」からなり、「秀句燦燦」としてこれらの鑑賞文を、また連載ものの評論を3編収録して、簡潔な構成となっているが、誌面に一貫して感じられることは、読者にやさしい読みやすさだ。

代表の主張する「同人誌の文字はきれいに、誌面は読みやすく、そのため頁に追い込みはせず、必ず見開き頁の右側から始まるように。雑誌は料理の器のようなものだから、手に取っての心地良さも価値の一部。」という思いが各頁に実践されているのだ。「ににん」は、代表も同人と同じ土俵で作品を発表しており、その風土から全体的に俳句作品は自由な個性にあふれている。

「ににん集」より
引力のときをり消えてお花畑   岩淵喜代子
夫婦てふゆるき引力年の暮れ   木佐 梨乃
綿虫のふはと引力かはしけり   鈴木まさゑ

「さざん集」より
登校日黒板いつぱいの残暑    大豆生田伴子
満月に追ひ詰められて町を出る  尾崎淳子
後悔の数ほど咲いて寒椿     島崎正彦
音といふ音みな消えて天の川   末永朱胤
心中を終へし人形近松忌     谷原恵理子

また、「ににん」の個性は、巻末の「雁の玉章」という付録にも現われている。クラブ活動という位置付けで、散文の好きな人は誰でも頁をもらうことができるらしい。
今号では詩や随筆を含む5編が掲載されている。『ににん』の今後のますますのご発展をお祈りする。

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