鳴戸奈菜句集『永遠が咲いて』2012年 現代俳句コレクション

俳句のみならず文学表現は、日常を非日常にしたところ、あるいは非日常を日常に近づけたところで切り取るものだと思っている。鳴戸さんの俳句にはそれが顕著で楽しい句集だ。

  亀鳴くを待てばいつしか亀となる
  筍の茹で上がるまでひと眠り

一句目は、見方によっては虚構の上に虚構を積み上げたような句である。それにも関わらず納得してしまうのは、語り継がれた「亀鳴く」という季語が輪郭を持っているからである。二句目の「筍の」は、さいごの「ひと眠り」の措辞が「一炊の夢」のような物語性を醸し出して、日常を非日常へ置き換えるからである。

 桐は花明日は伐られて船の上
 女役降ろされ蛇を撫でてをり
 いとけなき蛇をおもちゃの女の子 
 水溜り冬のはじめは春に似る
 冬野より帰れぬ母よさようなら
 老斑の二つ三つが花あやめ
 また春で我家に我に飽きにけり

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