週刊俳句編『俳コレ』 2011年  邑書林

野口る理「眠くなる」
象死して秋たけなはとなりにけり

福田若之「302号室」
白鳥を三人称の距離に置く

小野あらた「隙間」
鷹去つて双眼鏡のがらんどう

松本てふこ「不健全図書」
コスモスに次から次へ風が吹く

矢口 晃「白壁に蛾が当然のやうにゐる」
あと二回転職をして蝌蚪になる

南十二国「星は渦巻」
遠ければ山はそらいろ桃の花

林 雅樹「大人は判つてくれない」
枯野にて曽良が芭蕉を羽交締め

太田うさぎ「蓬莢一丁目」
梟なら少しきつめに抱いてやる

山田露結「夢助」
給油所をひとつ置きたる枯野かな

雪蛾狂流「こんなに汗が」
母の日はキリンの首を見て帰る

齋藤朝比古「良夜」
囀りや日影と日向隣り合ふ

岡野泰輔「ここにコップがあると思え」
シチリアへ行きたし玉葱を焦がし

山下つばさ「森を飲む」
あぢさゐに潜水艦の浮上せり

岡村知昭「精舍」
折鶴のところどころの沙漠かな

小林千史「エチュード」
波はげしければはげしき踊かな

渋川京子「夢の続き」
螢よりさきに来てゐる男かな

阪西敦子「息吐く」
人日の顔のすみずみまで洗ふ

津久井健之  「ぽけつと」
休講と知りてぎんなん匂ひだす

望月周  「雨のあと」
一本の冬木をめがけ夜の明くる

谷口智行 「紀のわたつみのやまつみの」
囲炉裏辺のみな老猿に見えて来し

津川絵理子 「初心の香」
ものおとへいつせいに向く袋角

依光陽子 「瓢然」
天井に風船あるを知りて眠る

コメント / トラックバック1件

  1. 小兵衛 より:

    早速購入してみます 

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