敬老日しみじみと掌のうらおもて   吉武千束

ウィキペディアによると、兵庫県多可郡野間谷村で老人に感謝をする日として行っていた行事が、国民祝日になったようだ。掲句はそれなりの年齢を重ねた作者が、年長者へというよりは、自分を振り返っているのである。それが(しみじみと掌のうらおもて)の叙述になった。

石川啄木の(働けど働けど我が暮らし楽にならざり/じっと手を見る)とは違うが、わが手をみる行為は自照を行動化したもの。自らを振り返っているのである。この端的な表現力が(発掘のこの日焼ぶり真面目ぶり)(風鈴の吊し処を風にきく)(鎮まりし波起こしては紙を漉く)(日傘ふとうれしきときは回しをり)などの佳句を生む土台になっている。(三第一句集『太古のこゑ』序文=能村研 2014年7月 文学の森)(岩淵喜代子)

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