清水和代第一句集『風の律』  2014年  本阿弥書店

帯文・上田日差子

上田五千石を師系とする山田諒子氏から俳句の手ほどきを受けた清水和代氏は現在「春塘」主宰。

ゴム毬の倒す鶏頭二三本

勢いをもって投げられた毬によって鶏頭の数本が倒れた。鶏頭はまた起き上がったかもしれない。その一瞬の出来事として提示されている。
それだけにも関わらず、その光景が読み手にいつまでも揺曳するのは、ゴム毬の感触と鶏頭の花の感触の不思議な調和が手伝っているかもしれない。

蝌蚪の紐くらりくらりと影もちて

たとえばこの句など、「蝌蚪の紐くらりくらりと」までは誰でも見えている光景である。ここに「影もちて」の措辞が加わることで俄然蝌蚪の存在感が増幅されていく。それが清水和代氏の本領なのではないかと思った。

今生を水鳥でゐて夫婦かな
くちなはの道わたるとき道の幅
踏板を水の乗り越す初螢
船虫にちよいととどまるひげのあり
遠蛙そろそろ膝をくづしても

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