2014年2月2日 のアーカイブ

正津勉詩集『子供の領分/遊山譜』2014年 アーツアンドクラフツ発行

2014年2月2日 日曜日

 このところ散文ばかり書いていた正津さんの久しぶりの詩集上梓。正津さんの言うにはタイトルを付けるのにも苦心したそうだ。結局二つの表題を両立させた形の詩集にしたようだ。

「子供の領分」は・わが植物記・故郷の廃屋・今は昔・という見出しに分かれる。ここまでくるとそのタイトルの想いが見えて来る。「遊山譜」はその名のとおりの正津さんのライフワークにもなっている登山から得た詩である。以前の詩集は思春期のような熱いことばでつづられていたが、今回はその熱さが篤さに変化している。東日本大震災は影響しているのではないかと思う。

 『渓』

暗く深く切れ落ちた渓
地を被う丈の高いクマザサが
ざわざわと騒ぐばかりの
ずっと下も底のそこに

ひっそりと仰向けてある
みればそれは自分であるとも
わからぬほど腐敗がすすむ
禽や獣に啄まれ裂かれ

虫や菌の類が這い巣くい
もう腸の襞から骨の髄まで
あらかた蛆どもが貪るところ
眼球は融け眼窩に草むし

詩集

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