「ににん」冬号
同人誌で季刊である。しかし、いただく毎に楽しみな読み物が沢山ある。岩淵代表は「結社というのは喩えれば「城」、そして同人誌は「家族」に喩えられる。城には閉鎖性があり、家族には甘えがある。」と書いているが同感である。さらに『ににん』は、同人誌のようでそうでない。どこか、公園のような性格を帯びている。いつも、自由にでいりして、風が感じられる雰囲気でいたい。」とも書いており、私もそっと入り込んでみたいと思っている。本号は、まず、長嶺千晶句集『つめた貝』の特集で、中岡武雄さんと山西雅子さんが執筆している。二人が共通に取り上げている三句は
もの思ふためのわが椅子去年今年 長嶺 千晶
訣別や雪原に押す煙草の火
冬桜こころに篤き文の嵩
そして、特別寄稿を、齋藤愼爾、須賀荊、伊丹竹野子、岩淵喜代子、宮本部汪、長嶺千晶、望月遥の皆さんが読んだ小説をテーマに二十四句を発表している。ちなみに、齋藤愼爾さんは、寺山修司『田園に死す』を取り上げている。最初の三句を挙げると
村棄つる日の茫茫と蝉の穴 齋藤愼爾
淮か哭く水の面に雛置けば
月見草まはりいづこも無のふかし
という具合である。
さらに、両方に作品を発表できるににん集、さざん集があり、作品欄以外の連載として『歩く人・碧梧桐』、『わたしの茂吉ノート』、『石鼎評伝』、『予言者草田男』がある。
最後に岩淵代表の三句
雪女郎来る白墨の折れやすく
見えてゐる十一月の水平線
木枯らしやあまたの星を星らしく