1955年生まれ 「街」「船団」所属 帯 今井聖
面白い句集というのでもない。それなら楽しい句集というほうが近い。しかし、それとも違う味を含んだ句集だ。
二の腕を百合が汚してゆきにけり
プールより見上げし母のふくらはぎ
一句目は抱えられた百合が二の腕をよごしていったという、ただそれだけのこと。二句目は、プールの中から見える位置が母のふくらはぎだったと言っているだけのこと。きわめて単調な表現にも思えながら、どちらの句も豊かな映像と豊かな空気を感じ取ることが出きる。
六月の裸といふはたよりなく
青嵐ゴッホの耳を知つてゐる
この句から、石田波郷の「六月の女すはれる荒筵」の句を思い出す。二句目はゴッホが耳を切ったことを知っていると言っているのか、その切った理由なのか。あるいは、切った耳の行方なのか。「知っている」の措辞が耳の存在を大きくして新鮮。
図書室に海の匂ひや半夏生
子育ての途中は月を見てをりぬ
ひとりでにゆるむ包帯雪の嶺
火の中へ戻る火の粉や冬の星
2009.11.16 読売新聞朝刊の四季にて
一体に 二つの命 冬に入る
の句を見て、ページ開きました。将に我が娘のままなので、気持ちがほんわかと
しているところです。
ブログにお目を通してくださって光栄です。さっそく読売新聞もみてみます。