森敏子著『薔薇枕』 ふらんす堂 (2008年8月刊)
落椿水に筋つけ流れてけり
繭の中うすもも色の骨一つ
花冷えや見えざる人を見てをりし
仇討ちに出掛けてゆきし菊人形
見えざるものをみようしている特別な感覚の持ち主のようだ。
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山田真砂年著 句集『海鞘食打て』角川書店 9月刊
木犀に気づくは老いに気づくごと
この作品に会って、こうした年齢に到っておいでになるのかとも思ったが、
都心には大き穴あり蚊食鳥
雁落ちて風のくぼみの湖国かな
等など、大きな景をさりげなく切り取る力量も感じた。
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安藤恭子著(1959年生) 句集『朝餐』ふらんす堂 2008年9月刊
雛の箱空になりしは重ねられ
春空をまはり落つるは何の種
濡れてゐる方が葉表柏餅
菖蒲守われのうしろを歩みくる
俳味、というか俳句を心得た作家。
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井上弘美著 『汀』角川書店 2008年9月刊ふらんす堂
母の死のととにつてゆく夜の雪
沼の日にゆきわたりけり夏の蝶
山々の帰つてゆける遠蛙
もうすでに定評のある作家。大成してゆく俳人の生活背景も具間みられる句集である。第一句集は事故にあわれた母を詠んでいるが、今秋はその母のなくなるときを諦念をもちながら詠んでいる。それが一句目に現れている。
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川島 葵 著『草に花』 2008年9月刊 ふらんす堂
凩や子供が子供呼び集め
はるばると犬戻り来る牛膝
下萌えを子のさびしがるところまで
このところ、駆け込み乗車のように9月刊の著書が送られてくる。この作者も新人賞対象の句集。
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