‘テーマ俳句掲載’ カテゴリーのアーカイブ

テーマ俳句 「書」ににん38号掲載

2010年3月10日 水曜日

  寒月光放つ良寛書の余白        遊 起

江戸後期の禅僧・歌人である良寛は、諸国行脚の後に帰郷して、国上山に五合庵を結び村の童を友として脱俗生活をおくるが「大愚」の号を持ち、「書の命は『余白』にあり」と多くの書を残す。揚句「良寛の書」の余白には寒月光を放つのに充分な情趣があり。「良寛の海に下り立つ素足かな・・原裕」の句の『素足』と遊起の句の『余白』が、互いに響きあうだろう。(竹野子)

  いろはにほ書き続けてる春の宵    acacia

陽気漂う明るい春のいちにちが暮れなずんでいく。昼間の程よい疲れをいといながら、一風呂浴びて湯殿を出て鏡の前でおめかしを・・。風呂上りの洗面所の鏡は身熱りの温度差のせいか、すぐに曇ってしまう。曇った鏡に「いろはにほ」と書いてみる。少しおくと文字がぼやけ、拭いてもまた曇る。また、いろは・・いつまでも書き続けていたいような・・・。こころの移ろい易い春の宵ならではの描写である。よく「へのへのもへの」などと書き連ねた幼少の頃を思い出す。    (竹野子)

  雪中花画と書が弾み息を吹く     万香

池大雅や与謝蕪村の南画には、中国の詩をもとに風景や人々が描かれ、見ていて楽しくなってくる。水墨に彩色の濃淡のつけられた画にちゃんと詩も書かれ、詩を理解すると、風景の味わいも深くなる。まさに「画と書が弾み息を吹く」である。雪中花の季語が絵画的で凛として美しい。(千晶)

  万巻の書を読みても愚茗荷汁    倉本 勉

茗荷は物忘れを促すということを聞いたことがあるが本当なのだろうか。一所懸命に勉強して、本を読んでも右から左へ忘れてしまうのは、悲しいかぎりである。しかし、ソクラテスの言葉「無知の知」ではないが、おのれの愚を認識すること、すなわち叡知であろう。(千晶)

  羽子板のうらに長女の名前書く    橋本幹夫

初めて生まれた女の子、長女へ羽子板を買ってあげたので、その裏にその名前を書いた。羽子板を買うときはたくさんの中から、選ぶのに随分と迷ったに違いない。ようやくこれというのを選び買って帰った。その裏にただ名前を書くとしか言っていない、初めての女の子を持った喜びが見える句である(禎子)

  告知書をながめては七度目の春         匙太

告知書とはよく分からないが、七度目の春になったということを自祝して詠っているので、おそらくがんか、重病の告知をされた診断書なのかもしれない。作者はあれから七度目の春を迎えることができて、よくぞ生きてこられたことよと感慨にふけっている。経験しなくては詠まないし、このように境涯を俳句に詠むことも大事なことと思う。(禎子)

  冬ざれや我が名を書きて狼狽える   三千夫

わが名を書いて狼狽する場面とはどういうときだろうかと想像してみる。とりあえずはひとりの場面なら手紙。あるいは、記帳の場面など。あるいは手持無沙汰を埋めるための無意識な筆の走りだったのか。どちらにしても、その名前を書いて、その己の名前に向き合ったときの内面を語るのが冬ざれなのである。季語は思想を表すためにもある。(喜代子)

「ににん」37号掲載句

2009年11月29日 日曜日

家の灯がも一つ増えて冬篭り               acacia
菊白く嘘赤くつく愛妻家                   新木孝介
どの家も静まる中を星飛べり                新木孝介
一家言団栗回るアルミ皿                  潅木
木の実落ちる音して家庭裁判所              倉本 勉
いわし雲さら地となりし生家かな              こさぶ
家柄もちからもあらじ冬の蠅                 匙太
四代目江戸家猫八良夜かな                匙太
春旅や江戸の家並み奈良井宿              西方来人
長年の猫も家族や日向ぼこ                 西方来人
虫の音や家出のやうな旅支度               たかはし水生
御飯あり家ある平和冬灯し                 たかはし水生
帰りたい家思う母秋になり                 内藤紅葉
晩秋の家鴨と話などをして                橋本幹夫
家中の灯りを消して冬紅葉                橋本幹夫
秋光や古き町屋の犬やらい                 ひろ子
凍雲の家柊に触りおり                  畦前一条
故郷も我が家の後も枯れ草木              万香
蚯蚓鳴く我いなければ無人の家             三千夫
ある家を探しあぐねし敗戦忌               三千夫
        (以上はホームページで鑑賞してあるもの)
菊薫る主婦の座ありし家家や              acacia
清し静かに走る革命家                   新木孝介
整然と家並ぶ丘冬の薔薇                 新木孝介
O型は家族で独り文化の日                   潅木
幽しや定家葛の香を覚ゆ                    潅木
家芋愛する人と生きてゐる                   潅木
ポインセチア家族写真の横に置く              倉本 勉
人住まぬ家に寒柝打たれけり                倉本 勉
家がいいリンゴのほっぺが上を向く             紅葉
蛍族家の紅葉と二人きり                    紅葉
樟脳のぷんと旧家の毛布かな                 こさぶ
家筋を聞かれ戸惑う秋の暮                   西方来人
残業の最終バスの家路かな                  西方来人
孫ら来て家中外の木の実かな                 西方来人
我が家にも関取居りぬ九月場所                橋本幹夫
家中の闇たしかめて冬紅葉                    橋本幹夫
七夕の夜の家々の願ひかな                   橋本幹夫
怪しげな家系図広げ鵙高音                  林 阿愚林
きしむ家戸(かと)引きて朱柿の空に映え          畦前一条
かじむ手の大息ついて家夕げ                 畦前一条
霜の家さらに靴下履き添えり                  畦前一条
虫しぐれ静かさにある空家かな                   万香
十六夜吾が家に遠き道あかり                    万香
災わいに家を無くした冬の空                     万香
少年は待つ家裁の庭の鶏頭花                   三千夫
家溶けて人溶けて山笑うなり                     三千夫    
「家なき子」読みつつ寝入る炬燵の子               三千夫

「ににん」36号への掲載句

2009年9月1日 火曜日

 ホームページ管理者岩淵喜代子の都合により、申し訳ありませんが、
暫く「ににん」投句コーナーを休止いたします。
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信号の黄が赤になる敗戦忌          橋本幹夫
ほろほろと黄色き月や野分あと          新木孝介
黄昏に合歓のあかりのありにけり      西方来人
鬱蒼と黄泉路ゆくごと夏の寺            万香
硫黄島プロミネス知り梅雨の山           acacia
清志郎逝つてしまへり黄金花           こさぶ
黄昏や静かに植田灯をともす            桜丸
裏辻にひょいと置かれし黄のカンナ      西方来人
河骨の黄の一輪や昏き水             ピカンテ
誰も彼も黄昏色の生ビール          橋本幹夫
もろこしの一粒ずつに黄の光り          西方来人
黄昏れてゆくすこしまへ橡の花         倉本 勉
紫陽花に小さな黄傘がお辞儀する      内藤紅葉
黄昏のビギン流るる夏館            こさぶ
文化の日むかし硫黄木とふのあり       じゅん
風に揺れ重さにゆれりひまわり黄      西方来人
踏切を行きつ戻りつ紋黄蝶           ハジメ
ひまわりになる母と子のかくれんぼ         ひと子
たいまつの火の粉散らして鵜飼かな       ひろ子
 鶏頭や黄色のぼうし尖がらせ            万香
しずけさや空灼くる前の広島市     もとみやたかし
麦の秋画家に黄色な館あり          山口紹子
黄金仮面おたふくくぐる茅の輪かな      岩田 勇
黒髪に倦みて黄金に梅雨籠         門谷美保
白絣母の縫目の黄ばみかな         林 阿愚林
夏霧の中に黄色い声残る              さわこ
黄金虫一円硬貨舐めてをり           ハジメ
爪を黄に染めて奮闘夏蜜柑           横浜風
 幽玄の黄に染まり往く月見草          岩崎香雪
やや黄ばみなほ全力の火取虫            匙太
いきいきと黄の花ちらすゴーヤかな        遊起
ホスピスに笑ふ声あり黄のカンナ      橋本幹夫
見上ぐればのうぜんかずら黄橙色        万香
銀杏降る外苑たちまち黄一色          岩田 勇
岬みち蝦夷萓草の黄花みち        たかはし水生
振り向けば振り向く前を黄金虫          橋本幹夫
かき氷黄泉までは持ち得ざるとぞ       じゅん
墓前には母の好みし野菊の黄        なかしましん
ひまわりの空にあふれる黄色かな      青木治敬
黄葉散る時に少年目覚めたり          橋本幹夫
黄に染まりニッコウキスゲの山泳ぐ         華子
口先の黄色い秋刀魚買いなさい          ピカンテ
梅雨ながく黄色いからすを描きにけり       ひろ子
黄揚羽の翅ぐいぐいと蟻の穴          ミサゴン

ににん35号への「赤」掲載句

2009年6月2日 火曜日

曇天のつまらぬ午後や薔薇赤く       新井大介
赤ベコの小振りを買うて余花の雨       たかはし水生
春雨に二歳の孫が赤き傘           留守秀樹
他人のまま女同士の赤のまま        さわこ
残る鴨赤の他人に見えぬなり         匙太
何よりも真っ赤なばらを供花とせむ      岩田勇
高楼の白地に赤く昭和の日          橋本幹夫
菜の花を赤く染めてる朝陽かな        西方来人
春愁ひ赤松の幹にふれてみる         acacia
赤心や問わず語りに蓬摘む          西方来人
赤鳥居百基くぐりて牡丹かな          じゅん
細き首赤きドレスのチュウリップ       志村ゆり
梅雨夕焼赤錆うきし自転車押す        高楊枝
会津椀赤深くして春の雪            阿愚林
青き踏む常より軽き赤子かな         こさぶ
赤あかと唱えていたり春の夢         西方来人
母の日や兄の赤紙色褪せて         さわこ
抱かれて赤子泣き止む初燕          橋本幹夫
卒業をまづ赤飯で祝ひけり            岩田勇
夕焼の瞼を閉ぢて未だ赤く             橋本幹夫
恋猫は赤信号も見ざるなり            土下信人
孕馬赤きたてがみ靡かせて           橋本幹夫
おぼろ夜を赤子のままに過しけり        匙太
クロッカス赤き五線譜ひくリスカー       重箱
さえずりを聞きつ赤い実食われけり       西方来人
スコールやみ赤いバイクが湧き出でて     土下信人
愛憎の他人事なり赤き薔薇            灌木
遠つ国に赤十字旗のなびき朱夏         じゅん
ほほ赤き双子兄弟入学す            横浜風
蒲公英を赤く染めしは夕陽かな        下信人
寝返りをうって赤子の酷暑かな        なかしましん
赤い糸切れる日もあり花うつぎ        さわこ
赤子抱きまるく茅の輪をくぐりけり       橋本幹夫
料峭や冬虫夏草の赤い夜            隠岐灌木
和蝋燭真っ赤に染まる菜種梅雨        ミサゴン
朧夜や逆さに読ます赤看板           西方来人
冬薔薇赤きを保ち雨の道            橋本幹夫
肌縮む寒の戻りに枝垂れ咲く         坂本 廣
チュウリップさらに真っ赤な雨上がり     西方来人
赤提灯の父親泣くなり穀雨の夜       橋本幹夫
余寒なほ赤い帽子の六地蔵         ひろ子
陽炎や年月経たる赤い糸           西方来人
ポケットに赤鉛筆や卒業す           海音
花桃の赤が溶けだす朧かな          西方来人
赤の色濃すぎるかしら春ショール       ミサゴン
赤心といふは詩語なり夕桜           秋吾
赤提灯微動だにせずぶらんこ揺れ      高楊枝
赤穂義士寺は泉岳涅槃西風          橋本幹夫
春雨に赤き煉瓦のさらに濃し          橋本幹夫
姫林檎かじりて酸っぱし恋心         土下信人
石仏の赤い帽子に雀おり            篠塚英子
それとなく頬赤らめて雛の酒          高橋三歩
はなのさくまえのほのいろあかめもち    東雲乃鯊
茜空 色競い合う 山つつじ            田中善朗
時鳥赤の他人の巣に啼けり           橋本幹夫
赤坂の仮装マラソン春嵐            さわこ
赤札の財布空つぽ涅槃西風          遊起
赤椿てっぺんまでも咲きにけり         ひとり
夕凪の瀬戸は真つ赤に染まりけり      橋本幹夫
春惜しむ赤き剃傷顎につけ          新井大介
 春の蚊を叩き潰して真つ赤な血         ハジメ
うさぎの目赤きを背ナに卒業す          華子
真赤な嘘ついて貰ひし春の風邪         中村光声
赤星に向かって声を録音する彼岸         重箱

四月一日発行「ににん」34号掲載句

2009年2月28日 土曜日

黒猫は炬燵の上の哲学者             半右衛門
太陽に黒点白魚に眼                塚本惠
黒猫のすり寄つて来し初詣              海音
闇という黒に抱かれ山眠る            西方来人
目覚めれば黒一本の冬の川             阿愚林
黒縁の中で微笑む梅の花             ミサゴン
黒揚羽ニライカナイよりおとづれる        土下信人
真つ新の黒帯つけて寒稽古             ハジメ
黒色の鉛筆が好き初日記             橋本幹夫
春風や黒き瞳に映る吾              土下信人
黒帯に気合を込めし寒稽古             横浜風
初句会ラッキーカラーは黒として          さわこ
漆黒の闇懐かしや凍豆腐             たんぽぽ
モナリザの微笑黒衣の淑気かな          西方来人
黒板に「賀正」と書きし恩師逝く         橋本幹夫
黒猫の竈猫とはならず去る              祥子
成人の日の黒雲の行方かな              遊起
月山は臥した黒牛初茜              中村光声
黒皮の三年日記を買ひにけり           橋本幹夫
冬麗や瑞穂の国の大黒天               華子
黒服の列して御用納めかな            西方来人
黒髪にふわふわ纏う静電気               九
黒猫も白猫もみなねこじゃらし          土下信人
教会の黒く冷たい懺悔室             ミサゴン
那智黒を手土産に小春日和かな           廣島屋
葉牡丹に黒き目ひとつ欲しと思ふ          じゅん
黒鍵に今朝の寒さを叩きけり           橋本幹夫
ほっぺたに石黒飴や猫柳            塚本 惠
暗黒に白き糸吐く蚕かな             隠岐灌木
黒蟻は地球を歩く冬篭り             土下信人
黒人のプレジデントか冬薔薇          こさぶ
黒板に校歌清書の卒業子             森岡忠志
黒豹の伸び切っている小春かな          岩田 勇
採血の赤黒き血や冬深し             新井大介
黒猫の目と目があって日向ぼこ        ひろ子
白黒を言うて騒いで忘年会          半右衛門
暮早し黒雲に見紛う塒鳥          篠塚英子
北風や黒糖団子蒸かす音            祥子
余寒ありオセロゲームの白と黒           海音
はさまれて黒うらがへる漱石忌          廣島屋
冴ゆる夜は黒塚の鬼女哭くといふ         たかはし水生
黒々と烏の朝食冬の道            内藤もみじ
黒豆を十粒食べて仕事初め           acacia
乳母車黒い瞳に温まる             内藤紅葉

ホームページ投句コーナーより 33号掲載句

2008年11月27日 木曜日

淡白と言われ戸惑う暮れの秋          西方来人
だいこひき遠くの山は白き雪            松林六茶
片足袋や異国力士の白い肌              恵
酒臭き独白の人文化の日             廣島屋
月明かり我白髪とススキの穂           篠塚英子
指揮棒の白の残像冬隣               坂石佳音
小鳥来る句帳に余白ありにけり           海音
胃カメラの白い時間や残る秋           さわこ
山間の飯場白菜漬けられ居り          たか楊枝
白ワイン冷えて月下美人咲く            中村光声
天高く白いチャペルの鐘が鳴る           小夜
白い雲崩れて沈む秋の湖               ミサゴン
白地図に紅葉前線描き込めり          たんぽぽ
白墨の指を休めて鉦叩               橋本幹夫
二条城秋蝶白き影になる                 acacia
白壁や影絵の葡萄刻刻変わる          西方来人
秋日濃し枯山水の白き波               中村光声
落葉松の散る明るさや白秋忌          森岡忠志
白芒あの世の人へ母叫び             たんぽぽ
片腕の眠れる真昼白芙蓉             桂凛火
図書館へ曲がる標や白木槿           中村光声
晩年の余白も楽し真葛原              華子
夕月夜世は白象の背の上                    隠岐灌木
白線を引き直したる運動会                    ハジメ
月白のベンチに誰か待つてゐる            たかはし水生
追伸の後の余白や虫の声             阿愚林
地酒酌む白露の宿や峡の闇             岩田  勇
声掛けて白曼珠沙華褒めにけり          中村光声
鴨足草日陰の白はやや不安             倉本 勉
ピアノから水溢れ出す月の白            石田義風
秋空を白鷺一羽ほしいまま             遊起
あいたいと白鷺草もはねひろげ          小夜
北国のあまりに白き昼の月             ミサゴン
頬撫ずる風みな白き花野かな          中村光声
白票を投じて秋の総裁選               橋本幹夫
白神の山毛欅林より秋の声             横浜風
真白なる喉仏拾ひ夏終る                宮島 千生
短日の白煙走る狼煙台                黒猫
黄落や白きポットの暖かく              しま
耐えて立つ白くなびいてススキの穂        篠塚英子
白線を流して山の笑いけり              黒猫
紅白のテントが並ぶ七五三              緑浪
白球の行方はるかに天高し               たか楊枝
白けてる 繁華街の 朝の街              松代芭七
白すすき少し死人のにほひせり            匙太
白猫のまなぶたたたむ秋の昼             敏

テーマ俳句『馬』ににん秋号掲載

2008年9月2日 火曜日

馬上から人も乱すや多度祭り            石川順一
惜春や祖母と乗馬の幼き日             石川順一
海風の通る馬車道夾竹桃              中村光声
半身は闇の中なる竈馬かな             坂石佳音
馬上にて晩夏の原の波状見ゆ            隠岐灌木
終戦忌馬糞拾いを競いけり              平田徳子
絵の馬の風鈴聞き入る素振りかな          西方来人
大夏野馬は開放されてをり               ハジメ
種馬の男根凛凛し夏の雲               中村光声
瓜の馬教わりしまま子に伝ふ             西方来人
楽団をお馬が先導春うらら              小夜
山開き馬の背中に揺れながら            小夜
馬方の居そうな木曾路草いきれ          西方来人
馬が茄子食べたよ食べた砂が舞う         月湖
シャガールの馬は夏空飛びにけり         ミサゴン
馬の背のあまりに大き夏の空            ミサゴン
並足のリズムは涼し馬と風             ミサゴン
走馬灯見つめる頬に色映り              小夜
走馬燈老いて隙なき父の鑿             石田義風
沙羅の花おさなごゆらす木馬かな          曇遊
麦秋やかの日も聞きし馬頭琴            中村光声
いなさ吹く馬の匂いの資料館             さわ
青嵐動き止まざる馬の耳               森岡忠志
新馬鈴薯のめくれる皮の香りかな          遊起
夏草に馬頭観音隠れけり               西方来人
梅雨の日の吾は司馬遼妻清張           岩田  勇
走馬灯会いたき人みなお国替え           華子
水馬の動いただけの波が起き            ミサゴン
名の由来は知らず馬珂貝鮨旨し          たか楊枝
曲屋に馬と暮らした青田風             ミサゴン
粉粉の外れ馬券や薔薇の門             ハジメ
木曽馬ののっと現わる霧襖             岩田勇
菜園に馬面胡瓜下がり居り            半右衛門
馬冷す父子の会話はずみおり            さわこ
馬蛤貝を小筆で誘う浜辺かな           半右衛門
まばたきをしてる馬居て青葉風           acacia
一張羅の麻服で往く競馬場             宮島 千生
夏草を食む馬の居て雲の飛ぶ          半右衛門
怪談に耳欹てる仔馬かな              半右衛門
韃靼を還らぬ軍馬終戦日              中村光声
馬へ行く姉に先んじ汗まみれ            石川順一
草競馬魅入りてあつし砂煙             幹夫
重馬場に牝馬末脚競り勝ちて            幹夫
水馬バケツにいるよどこからや            曇遊
馬肥ゆる嬰固太り気短か             森岡忠志
皐波背に坂駆け上る島の馬           横浜風
大岩の馬頭観音さみだるる           ミサゴン
騎馬戦の少女は紅し運動会           西方来人
人参をねだる馬蹄の地団駄よ           華子
馬刺し食ぶ白露の宿の奥信濃          岩田 勇
藤椅子に司馬遼開く昼下り            宮島 千生
茄子の馬帰りの時刻はグーグルで       さわこ
馬乗りの毛虫二度轢く三輪車           隠岐灌木
馬なくて誰を酔わせる馬酔木花          小夜
馬塚に供花一輪や田水沸く           岩田  勇
子ら乗せて驢馬悠々の猛暑かな          acacia
夏神宮クラブの白馬子等はしゃぎ         acacia
暗がりに馬追い鳴くやススイッチョ        半右衛門
蝉時雨馬の耳なら何と聞く             横浜風
馬集め来て夏の夜の映画館            阿愚林
流鏑馬の土ぼこり舞う夏祭り            ミサゴン
雷鳴に聞き耳立てし仔馬かな           西方来人
茄子の花馬の耳持つ十七歳            恵
炎昼や馬蹄の焼ける匂ひして           森岡忠志
皐波背に坂駆け上る島の馬            横浜風
牛馬のつなぎの標赤とんぼ             西方来人
父の背を馬跳び越ゆる子の涼し         隠岐灌木
軽雷に種付馬の耳うごく               たかはし水生
炎天や馬蹄擦れたるアスファルト          玉裳
馬の耳釘付けにする南風かな           さじ太
大岩の馬頭観音さみだるる             ミサゴン
水馬はがねの水を蹴りにけり            中村光声
馬歯馬歯と馬齢を加ふ昼寝人          横浜風
長々と馬の尾ゆるる夏野かな           さじ太
こんな時馬の嘶き草蛍                 ミサゴン
馬跳びの子等の歓声片陰り              中村光声
馬小屋の匂ひ消さざる扇風機           ハジメ
馬だつて淋しい梅雨でありにけり          中村光声
風青し白馬重賞初制覇                宮島 千生
馬の耳釘付けにする南風かな             さじ太
登山馬帰路の値引は知らぬまま           隠岐灌木
有蹄の欠けても牝馬夏奔る              幹夫
荷馬車降り家路は遠し秋の暮             富沢
空を斬る立派な尻尾とたてがみよ          桐原 恵
終戦日遠き記憶の軍馬かな            中村光声
海風の通る馬車道夾竹桃               中村光声
二つ三つ馬と戯る夏帽子               西方来人
一つ木に馬の集まる青嵐               たんぽぽ

テーマ俳句『満』

2008年6月7日 土曜日

ににん31号・夏号掲載 句 (七月五日刊)

満州といふ国ありき蜃気楼           岩田  勇
昭和の日緑の日あり光満つ             acacia
人生の満期継続四月馬鹿             隠岐灌木
満腹の仔猫まとまりとろとろとろ          坂石佳音
春満ちて鯨は沖に帰るとも              ミサゴン
満たされることの不安や沈丁花            さわこ
いつのまにグラス満たしぬ月朧           廣島屋
一人には独りの心春満月                みどり
満を持したんぽぽ宇宙へ出奔す           石田義風
満塁に三振の児よ揚雲雀             宮島 千生
不満などあるにはあれど麦とろろ            祥子
サクラサク余韻の嬉し天満宮              ぐみ
満つる家の灯り点るる朧かな             玉裳
満月や森の奥から深き声               祥子
満ち足りて現を探る水中花               蛙
満干や飯蛸坊主遍路の途               鴨三
満潮痕辿りて歩む浜の春              横浜風
満天の星を知らぬ子青き踏む             たんぽ
ひなぎくの咲く満席の喫茶店           宮島栄螺
満開の桜の下の道化役              西方来人
春の海タンカー沈み油満つ            たかゆき
春潮の満ちて客船押し上ぐる            ハジメ
自転車の籠に満載うぐひす菜         たかはし水生
満足にゆかぬ子育て水温む            たんぽぽ
満ち引きの潮の揺りかご春の泡            祥子
満天の星に抱かれ山眠る             西方来人
春満月ひとりになれば本開く              shin
宵の満つけだるくとどむ桃の花            鴨三
観世音春の声聞き満る花              志村ゆり
乳癌の妻も満足山桜                  藤尾
春朧欠けても満ちる三日の恋             小夜
囀りや今日も満席木のベンチ            みどり
春満月しみじみ観れば恐ろしき            藤尾
鞦韆を漕ぐ満々と夢のこと              阿愚林
朧夜の円満離婚呵々大笑               ぐみ
花満開池の湾曲灯りして               ハジメ
来し方に満点いくつ万愚節              華子
満ち満ちて雪解け水に春の光           伊藤 無二
囀りや今日の幸せ空に満ち              華子
春風に満艦飾の濯ぎ物               たんぽぽ
満々の笑みはちきれるしゃぼん玉          さわこ
小満の花殻摘みの手の染まる             遊起
小満の風み空より吹きにけり            中村光声
役満を振り込みさうな蛇苺             曇 遊
満ちて来る若葉の香り漕ぎ急ぐ           石川順一
満足は目分量なり夏来る              平田徳子
絵馬に満つアラビヤ文字や楠若葉         宮島 千生
牡丹咲く母の内海満つるころ           中村光声
遠足の子に満面のゑみまたゑみ          廣島屋
ちゃぽちゃぽと潮の満つ音春の岸           しま
合歓の花はらはら母の満中陰           森岡 忠志
大地震満州育ち初夏に逝く             acacia
満面の笑窪えくぼや初夏の山           acacia
満席のプラネタリウム夏めけり           中村光声
月満ちる森に仰げる新樹かな           中村光声
満身の力思はぬ餌引く蟻              宮島 千生
若さ満つ原宿界隈新樹光              中村光声
気がつけば沢音満ちし夏の宿             玉裳
陽炎の中のピッチャー二死満塁          岩田  勇
路地裏のたんぽぽ満開明日は晴        宮島 千生
満月に黒雲一片近付けり               祥子
満腹の目のすぐわかり花筏             廣島屋
糠床の真中の釘や春満つる            さじ太
満開のミモザに生きる重さあり           華子
花筏満ち潮にのり川のぼる              小夜
ゆらゆらと潮満ちきたる春の海          半右衛門
満開の桜の上の虚空かな              中村光声
時満ちて別れの朝の花散らし            小夜
満座から杯を受けるや鯉のぼり          西方来人
たかんなに山の命の満ちにけり          中村光声
見上げれば橡の花花花の満つ            acacia
円満に解決しよし合歓の花               蛙
病室の窓辺を満たす緑かな            宮島 千生
万緑の匂ひトラウマ満たされぬ          石川順一
葉桜の下満席のカフェテラス            中村光声
降る雨に満遍なくも春惜しむ            石川順一
家に満つカレーの匂ひ子供の日         森岡 忠志
たかんなの鋭気満たして吸ひつく刃          遊起
満天の星降る岬能登の闇             岩田  勇
満天を深呼吸せり花水木             宮島 千生
蝌蚪満つる天水桶となりにけり          中村光声
摩訶不思議満地球てふ春の宵            acacia

テーマ俳句『円』・ににん誌掲載句

2008年3月4日 火曜日

以下を30号に掲載させていただきます。 

こがらしや円陣の声よくとほり         廣島屋
白白と浮きゐし冬の月円か           横浜風
あかぎれの手に五円玉紙芝居       石田義風
円相や冴え冴えとある冬の月       平田雄公子
円蓋に吹き溜まりたる落葉かな      大木 雪香
円周率に縁なき暮らし日記買ふ      たんぽぽ
冬の月円形劇場照らしけり          中村光声
寝転べば大円盤や春の空           中村光声
円卓に上座と下座春の月            夏海
くれよんのむすべる円や春の母        祥子
待ち合わせ闇夜の円タク鬼祭         小兵衛
豆まきの鬼の円い眼笑いけり        ミサゴン
方円に収まりきれぬ冬銀河         西方来人
とんがったつららの先の水円か       ミサゴン
雪積もる夜の一人の円舞曲         みどり
風花に楕円軌道の一度きり         隠岐灌木
観梅や四百円のカップ酒          森岡忠志
頑なに五円を投げて初詣           岩田勇
冬ぬくしプラネタリウム円天井       みどり
円周の一つの端に冬の富士            泰
梟啼く楕円の月の辺りかな         中村光声
円盤の時雨を切つて飛びにけり        ハジメ
山里のまるごと円く年明くる           遊起
射し込んで円の窓から春隣          西方来人
円卓に父は熱燗子は宿題             華子
雪かいてかいて円形広場とす           acacia
日向ぼこかごめかごめの小さき円       坂石佳音
初場所や円弧を描く土俵入り          半右衛門
鳰消えて冷たき円を残しけり           閑 魚
円き背を反り返しけり冬うらら           西方来人
子ら孫らそろへば円座大つごも           たか楊枝
音のみな円の内なる霜夜かな            shin
円錐の独楽に秘めたる力かな             祥子
ラガーらの円い雄叫び天を突く           阿愚林
円陣の真中に在りて初写真               蛙
恋心映すよ円の氷鏡                曇遊
年の瀬の夫婦円満障子張り           内藤紅葉
ゆびきりや注連縄飾り円なる           小 夜
円卓に手話はづむらし聖誕夜         たかはし水生
雪ん中蔓円形に手繰りよす           acacia
日溜まりの円き鏡や十二月           中村光声
円錐はサンタクロースピラミッド          徳子
凍星を映して円き水平線            中村光声
円卓をくるり回して忘年会             曇遊

29号への掲載句

2007年12月27日 木曜日

冬紅葉肩で息して斎場へ             たんぽぽ
柿熟れぬ肩の優しき阿修羅像        三千夫
烏賊干して猫は昼寝の鞆の浦          市丸裕
肩幅と歩幅で生きる老いの暮      なかしましん        
小包を開くとふわり肩布団         曇 遊
竹箒肩で支へて拾ふ栗          大木 雪香 
胸周り背丈肩幅毛糸編む         平田海苔子
肩借りて鼻緒きしきし後の月         遊起
知らぬくせに肩入れをして夜長かな     廣島屋
肩先で息ととのえる秋の蝶        荒池利治
肩寄せて微笑みかえす秋の風       半右衛門
花梨の実都電の肩のすれすれに       さわこ
秋蝶のロダンの肩にとまりけり      坂石佳音
ぶらんこに容るる秋思の肩の幅     猫じゃらし
地芝居や父の胸蹴る肩車         石田義風
なで肩のままの写真や暮の秋         廣島屋
肩凝りは星の引力星月夜           祥 子
肩たたきたき母さんの墓に菊       大木雪香
肩よりも高きを飛ばぬ秋の蝶       ミサゴン
肩の傷舐めて出て行く猫の恋       西方来人
羅漢像肩組み合いし良夜かな         華子
いかり肩なで肩秋の山の肩         しかの
肩に落つ夕日その後の一葉かな      大木雪香
生れしより肩書き持たず秋桜        華 子
肩越しの遠山白し星月夜         西方来人
敗北に肩落す白運動会          ミサゴン
肩の荷のおりていささか肌寒し     大木 雪香
豊年の肩抱きあふ道祖神         森岡忠志
古酒呑んで五十の果ての五十肩       ハジメ
肩だけが知っているなり女郎花       小兵衛
山男すすきを肩に戻りけり        たんぽぽ
秋の蝶髪から肩をつづれぬふ       隠岐灌木
肩車され名月に手を伸ばす        森岡忠志
肩越しに俺取ってやると敬老の日     たか楊枝
肩越の授業研究爽やかに         半右衛門
月涼し肩甲骨に触るる髪           戯れ子
肩幅をはかりてをれば夜の蝉         リズ
出湯小屋へ肩幅ほどの月の道     たかはし水生      
肩越しに風来る朝の深山蝉          リズ
肩書きを外して酌むや秋の暮れ      西方来人
肩ふれてより秋風の通い道          リズ
年毎に肩身の狭き夕端居         半右衛門
焼き芋の肩やふはふは力抜け         曇遊
肩上げの糸繰る母や七五三          佳子      ににん 

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