‘詩のように’ カテゴリーのアーカイブ

ゴーヤの花

2009年6月23日 火曜日

アンの店先に置いた植木鉢
花をつけたゴーヤがひょろひょろと伸びていた
八月になるのに花だけというのも遅れている
麻里伊さんは発育の悪さを気にしていた

突然澄子さんがゴーヤーの一花を摘んだ
何をするのかと思ったら
その花で咲いている花を叩きはじめた
ぽんぽんとまるで
パフで顔を叩くような軽さで
人口受粉をするつもりなのだ

みんなはその手際を後ろから眺めていた
鉢植えとは言いながら
ひとつひとつの花の受粉は時間がかかりそう
みんなは眺めては店に入り
また出てみたりしていた

私はその始終へ一回も席を立たなかった
それというのも私の位置は
ひょろひょろと伸びたゴーヤの苗のガラス越し
その手際もそれを打ち眺めるみんなの顔も
真正面からよく見えるのだ
見ている方も疲れてきた

そんなことやらなくてもと呟いた
うちの庭のゴーヤはきりもなく実をつける
男性たちもそう思っていたのだろうか
誰も受粉の手際を眺めに
店を出ていくことはしなかった

ひとしきりの受粉作業が終ってから
澄子さんはゴーヤの苗から距離を置いて
苗全体を見渡した
それから思い出したように
ぽんぽんと花を花で叩いた
取り残しがあってはならないとばかりに

みんながぞろぞろテーブルに戻った
受粉作業がやっとおわったのだ
そんなことしなくっても生るわよ
私はたまりかねて呟いた
だってねそれは蜂さんや蚊さんが
代わりにやってくれているからよ
と雅子さんが言った

天然自然の摂理とは誰も知らないところで
何かが働いているということなのだろう
あーというかたちに口をぽかんと開けて
わたしは大きく頷いた
月をさんの眸が雅子さんへ動いて
それからちらりと私へ動いた
去年の夏のことだった

夕日

2009年5月28日 木曜日

薄曇に透いて夕日が形をなさずにどろどろとしていた。
これでは明日が天気なのかそうでないのかわからないなー、

突然真上に鳥の鳴き声がした。
見上げるともない眉の上を、
何羽もの小さな鳥が放射状に飛んでゆく。
たがその先頭の1羽だけが異常に大きな鳥なのだ。
 
とにかく一直線に先頭の大きな鳥を追っている。
それが目に止まったときに、
なぜか小さな鳥の声に悲壮感を感じた。

追いかけている小さな鳥は10羽ぐらい。
親子なのか一族なのか。
ーー捕まえて!
と悲鳴を上げているのだろうか。あるいは、
鴉に咥えられている子供の名を呼んでいるのだろうか。

大きな鳥は鴉に違いない。
その嘴にはさんでいるのはきっと子雀だ。

一瞬の出来事で、逃げる鴉も、
追いかける雀の一族も
建物の陰へ消えてしまった。
足を早めて建物を通り過ぎてみたが、
追われる鴉も、追う雀の姿もなかった。

鳥たちの消えたあたりのビルの窓の
一つだけが夕日を捉えて、
窓そのものが燃えているように赤かった。
高層建物の一つの窓しか
夕日を捉えないということもあるのだ。

曇空のせいなのだろうか。

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