『吉野』2009年4月号  主宰・野田禎男

「ににん」冬号

 同人誌で季刊である。しかし、いただく毎に楽しみな読み物が沢山ある。岩淵代表は「結社というのは喩えれば「城」、そして同人誌は「家族」に喩えられる。城には閉鎖性があり、家族には甘えがある。」と書いているが同感である。さらに『ににん』は、同人誌のようでそうでない。どこか、公園のような性格を帯びている。いつも、自由にでいりして、風が感じられる雰囲気でいたい。」とも書いており、私もそっと入り込んでみたいと思っている。本号は、まず、長嶺千晶句集『つめた貝』の特集で、中岡武雄さんと山西雅子さんが執筆している。二人が共通に取り上げている三句は

 もの思ふためのわが椅子去年今年      長嶺 千晶
 訣別や雪原に押す煙草の火
 冬桜こころに篤き文の嵩

 そして、特別寄稿を、齋藤愼爾、須賀荊、伊丹竹野子、岩淵喜代子、宮本部汪、長嶺千晶、望月遥の皆さんが読んだ小説をテーマに二十四句を発表している。ちなみに、齋藤愼爾さんは、寺山修司『田園に死す』を取り上げている。最初の三句を挙げると

 村棄つる日の茫茫と蝉の穴     齋藤愼爾
 淮か哭く水の面に雛置けば
 月見草まはりいづこも無のふかし

という具合である。
 さらに、両方に作品を発表できるににん集、さざん集があり、作品欄以外の連載として『歩く人・碧梧桐』、『わたしの茂吉ノート』、『石鼎評伝』、『予言者草田男』がある。
最後に岩淵代表の三句

雪女郎来る白墨の折れやすく
見えてゐる十一月の水平線
木枯らしやあまたの星を星らしく

コメント / トラックバック1件

  1. 志村ゆり より:

    初めて投稿したのに

    素晴らしい身に余るほどのコメントありがとうございます

    励みになりました

    之からも頑張りたいです ありがとうございました

    志村ゆりですが この印刷には

    細き首赤きドレスのチュウリップ       志村ゆかり

    になっていますので 訂正をお願いいたします

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