蛙の親子

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ーーお父さん、もうこのポーズ飽きちゃったよ
***うーん、でもな散々考えて決めたみたいだから、勝手に動いてもなー。
ーーでも、あの人もう忘れているよ。
***どうして。
ーーだってお茶を淹れるときだってそうでしょ。沸騰したお湯を湯冷ましに入れて、
   それからパソコンに向かっては忘れてしまって、もう一度沸かしなおしている
   じゃない。
***そうそう、気を使って、折角美味しそうに淹れたお茶も後ろの台に置いたままにして
   しまうし。
ーーお茶が冷めちゃうよ、って言っているのに気がつかないんだ。お父さん、知っている。
***何を?
ーー今、ひとりのときに飲むお茶は特別なんだよ。
***えー、どうして。
ーーどこかのハイジンから届いた新茶だよ。だからとくに気を入れて
   淹れているんだよ。それを後ろの台の上に置いたまま忘れてしまうんだ。
***そうだったの、よく知っているね。
ーーだって、そのお茶の葉は冷凍庫に入れてあるんだよ。
***だから、冷めてしまってから気がついて、がっかりした顔しているんだ。
ーー自分の手の届くところに置いたお茶を忘れるくらいだもの、僕たちが居なくなっ
   たって気がつかないよ。
***でもなー、あの飽きっぽい大家さんが、随分長いこと居させてくれているからな。
   いままで、この家で、こんなに長く居させて貰ったのが他にいる?
ーーそう言えば、梟もいつの間にか居なくなったね。
***そうだ、きれいなペーパーウエイトが何回も入れ替わっているじゃない。
   こんなに飽きないで居させてくれているのは、俺たち親子だけなんだ。
ーーそうだね。片付けるっていうのは、大家さんにとってゴミ袋に入れることだもんねー。

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