『澤』七月号創刊八周年記念号 主宰・小澤 實
『澤』は毎年記念号の大冊(426ページ)を発行しているが、その都度テーマを持っている。前回は俳壇の若手特集だったが、今回は田中裕明特集。写真・書簡・に続き第一句集『山信』の複刻版。しかもこの句集は限定10部しか制作されなかったものだから、複刻版は貴重な資料となる。はじめてその句集が手書きの句集だったことも知った。
新聞紙破れ鬼灯赤くなる
我知らぬ人より母が柿もらひ
日のあたる机に石榴割れてあり
それと小澤實選の裕明作品二百句。裕明俳句の鑑賞・評論で239ページを使う保存版である。結社誌というと内部に向けての発信が多い中、稀な見識を発揮した記念号。
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中戸川朝人 第四句集『一陽来復』
風邪の衣をつまみ運びに末子たり
去りし背のいつまでもある黄沙かな
桃つつむ気泡しろがね瀬音殖ゆ
ひれ酒やうしろ戸に服噛まれゐて
花茨川底は地の傾きに
手をまはす幹より木霊土用波
虫売の縄張ることをはじめけり
文学の描写力を発揮した一集。
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森賀まりさんから「澤」記念号が出るという話は聞いていたのだけれど、
さすがに充実した号のようですね。まだ手に入るかなぁ。早速小澤實氏に
頼んでみよう。「山信」は「青」の誌上に一挙掲載されたことで世に出た
句集であり、当時の「青」も思い切った編集をしたものである。
電車さんへ、
そうですね。私もまだ、田中裕明を良く知りませんでしたので、貴重な本となりました。