岸本尚毅氏自選の15句
ときじくのいかづち鳴つて冷やかに
日沈む方へ歩きて日短
初寄席に枝雀居らねど笑ふなり
寒々と赤々と正一位かな
秋晴の押し包みたる部屋暗し
日高きに早や夕ごころ山桜
水の底突けば固しや水澄めり
焼芋を割つていづれも湯気が立つ
暖炉に火なし一切は遺品にて
その妻のこと思はるる不器男の忌
テキサスは石油を堀つて長閑なり
現れて消えて祭の何やかや
ある年の子規忌の雨に虚子が立つ
さういへば吉良の茶会の日なりけり
面白くかなしく遠く涅槃かな
岩淵喜代子選の15句
冬ざれや月の光は押す如く
凹みたるところが赤き焚火かな
山あひに金の屏風をきらめかす
水澄んで青空映る彼岸かな
降る雨の見えて聞えて草の花
さういへば吉良の茶会の日なりけり
馬鈴薯と牛肉買へと梅雨の妻
わが死後もある波音やうららかに
そのそばに月あざやかに大花火
テキサスは石油を堀つて長閑なり
片蔭が水の面に続くなり
冬ざれや踏めば水吐く野辺の石
相似たる朝と夕べ初景色
夕潮の満ちくるままに泳ぎけり
昼顔の風の如くに広がりし
何気なく拾って15句になっが、作者とは二句しか重ならなかった。作る側には、作ったときの思い入れもあるのだろう。作者の選句した句をみていると、「おかしみ」を目指しているような気がした。