『繪硝子』2009年10月号・主宰和田順子

結社誌を読む       谷中淳子

   赫き衣を赤く映して夏の海     岩淵喜代子

 夏の茂りに囲まれた湖は、普段よりも深い色をたたえている。そこにちらりと影がさす。あかい衣服が映ったのだ。もとの色より少し暗いのは、湖の色の深さゆえだろう。「赫」は燃え上がる炎の色、「赤」は燃えている火色を表すという。文字の使い分けによって、色のトーンの違いを表現しているのが視覚的な効果をも生んでいる。
 この作品は題詠「赤」五句のうちの一句で、同時発表に〈赤き花数へて椿にゆきつきぬ〉もある。 
岩淵氏は「鹿火屋」「貂」等を経て、平成十二年季刊同人誌「ににん」を創刊。

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