ほぼ二年ごとに上梓する句集でありながら、このたびの句集も大冊である。句数を正確には数えていないが、おおよそ900句ある。
ものの芽や空がひつかかつて困る
建坪に負けてさくらの拗ねてゐる
天に飽き地に飽き雪積るなり
裸眼には入れぬと知る櫻かな
中原道夫氏の句風は、ものごとのすべてを擬人化的な描写に置き換えているようだ。四句目の「裸眼には入れぬと知る櫻かな」になると、わかりずらささえ出てくる。
かたつむり昼寝の村を出てゆける
虹舐めて麒麟は脚を畳むなり
上記の作品も手法は同じなのだが、その手法が不思議な、かたつむりや麒麟の存在感を造りだしている。