『上田五千石五百句』 2009年刊

上田日差子主宰「ランブル」付録

    もがり笛風の又三郎やあーい       『田園』
    曼珠沙華わなわな蘂をほどきけり
    水増して代田ひしひし家かこむ
    渡り鳥みるみるわれの小さくなり
    かたつむり殻の内陣透けゐたり
    冬浜に浪のかけらの貝拾ふ        『森林』
    硝子戸に洗ひたてなる春の闇       『風景』
    雨空のあまり明るき仏生会
    堰といふ水の切口初紅葉          『琥珀』
    梟や出てはもどれぬ夢の村
    太郎次郎三郎そのほかみんな蝌蚪
    月の村川のごとくに道ながれ
    かげろひて記憶のごとく女来る       『天路』
    さびしさを涼しさとして倚る柱

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