上田日差子主宰「ランブル」付録
もがり笛風の又三郎やあーい 『田園』
曼珠沙華わなわな蘂をほどきけり
水増して代田ひしひし家かこむ
渡り鳥みるみるわれの小さくなり
かたつむり殻の内陣透けゐたり
冬浜に浪のかけらの貝拾ふ 『森林』
硝子戸に洗ひたてなる春の闇 『風景』
雨空のあまり明るき仏生会
堰といふ水の切口初紅葉 『琥珀』
梟や出てはもどれぬ夢の村
太郎次郎三郎そのほかみんな蝌蚪
月の村川のごとくに道ながれ
かげろひて記憶のごとく女来る 『天路』
さびしさを涼しさとして倚る柱