加藤かな文句集『家』   2009年  ふらんす堂刊

   春の山好きなところに並べ置く
   月曜は蒲公英の濃き畦となる
   空蝉や光つて何も見えぬ水
   毛布からのぞくと雨の日曜日
   冬の川毎日越えてる毎日見る
   陽炎へるあたりこの世のちぎれ飛ぶ
   つばくらめずいぶん雨に濡れながら

 その句集名がいかにも作品群の外装のように思えるのは、昭和36年生れの作者の基点が『家』そのものであるからだ。何処を開いても、作者の見える風景であることが柔らかな光を放つ。

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