加藤治郎主宰の『新彗星』3号
短歌には暗いのだが、この号は夭折の歌人笹井宏之の追悼特集に20ページほど使っている、と言っても、そんなに特別な歌人だったのだなーという認識をするしかなかったのだが。それでも、遅ればせながら歌集を読んでみたいともひそかに思い立った。
そんな日、マイミクの風さんが「朝、NHKで、夭折した歌人・笹井宏之さんの特集を見る」と書いていたのを見て、「新彗星を読んだばかりだったので、その番組見たかった」とコメントしたら「新彗星っていいでしょ」というお返事をいただいた。やはり、漠然と感じていたことが正しかったのだ。
それにしても、これほど充実しているわりには同人に連なるのは45名くらいである。雑誌を作っているものとしては、雑誌がかなり売れているのではないかと想像する。
夏石番矢代表・鎌倉佐弓編集の『吟遊』43号
この雑誌が他誌と違うのは夏石氏が世界俳句協会の代表でもあるので、横文字が多い。それを飛ばして読んでも多岐にわたる文章の厚みがある。作品は一頁の人、見開きの掲載を持つものとあるが、とにかくそれぞれが自立の作品を発表している。
絵馬は流れる川は渡れるものなのか 夏石番矢
まだ熱きかな花びらの吹溜まり 鎌倉佐弓
曇り日の地上くまなき蝶の翳 雲井ひかり
今回、いつもよりこの雑誌を丁寧に読んだのは三句目の雲井さんの「曇り日の地上くまなき蝶の翳」を見つけたからである。シュールリアリズム的な作り方にもかかわらず、この蝶の翳が写実的に納得できる。