『ボン書店の幻ーーモダニズム出版社の光と影』余談

「ボン書店の幻」の著者は詩歌の古書を扱うことでも知られている「石神井書林」の店主である。石神井公園へゆく途中に、小さな店構えで営業しているが、目録販売をしていると思う。

それで、思い出すのが、一年ほど前のこと。この書店のオーナーであり「ボン書店の幻」の著者にけんもほろろに扱われてしまった記憶が甦る。あー、そういう人物であるなら、そうした気位を見せるだろうな、と妙に感心してしまった。

この石神井書林から、大正末から昭和五年までくらいの「鹿火屋」誌をまとめて売りに出されたことがあった。どうしようかな、と躊躇ったのはもう評伝を殆ど書きあげてしまったからである。わたしは昭和13年以降の「鹿火屋」は持っている。多分書き始める頃だったら、迷わず買っただろう。

蒐集するという意思はなかった。手元の「鹿火屋」誌にしても、もうそんなに若くない私は落ち着く場所を考えておいてやらなければならない、と思っていた矢先の広告だった。それでも、五年間ほどの纏まった雑誌は貴重な存在である。吟行の折に肩を並べた俳人にその話をしたら値引き交渉してみたらと、躊躇っている私を後押しした。

もともと、「鹿火屋」が一冊単位で売りに出されるときは、大方は千円を下ったことはない。たいがい1500円ほどの売値がついているので5年分が五万円弱で買えるというのは、とても安価なのである。金額の問題ではなく、それを自分のところに置くわけでもない、というところに躊躇があったのである。

しかし、やはり買ってしまおうか、と思い立ったのは、その俳人の言葉に勢いがついたからである。それで値引き交渉をしたことがあるのだが、一言のもとにこの件に関しては以後受け付けない、というようなかなりきっぱりした返事だった。それが、かなり気位の高い人、という印象で記憶にある。そうしてこの「ボン書店の幻」の著者だとすれば、一枚に重なる映像となる。

私は所蔵している昭和13年以降からの「鹿火屋」を『日本近代文学館』に寄付することにきめている。というのも、この文学館は雑誌をかなり整理して保存しているからである。そこでの「鹿火屋」を見ると「石神井書林」で売っていた昭和五年までの雑誌はやはり買っておけばよかったなと思うのである。どんな経緯だったか、私はこの近代文学館の維持会員にもなっているだ。とにかく、「鹿火屋」を読むには俳人協会へいくしかないという不便さをずーっと感じてきていたからである。

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近代文学館目録「鹿火屋」の項目

41号 1922/07/ 大正11年7月
47号 1923/01/ 大正12年1月
53号 1923/07/ 大正12年7月
119号 1929/06/ 昭和4年6月
131号 1930/06/ 昭和5年6月
303号 1946/05/ 昭和21年3,4,5月
304号 1946/08/ 昭和21年6,7,8月
この鹿火屋の目録は2000年で終ってしまっている。要するに原裕が亡くなってから送られなくなってしまったようだ。
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