『六歳の見た戦争・アッツ島遺児の記憶』  榎本好宏著  角川学芸出版

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 アッツ島の戦いは、1943年(昭和18年)5月12日にアメリカ軍のアッツ島上陸によって開始された日本軍とアメリカ軍との戦。日本軍のアッツ島守備隊は上陸してきたアメリカ軍と17日間の激しい戦闘の末に玉砕したそうである。

アッツ島の玉砕は、以前サイパンへ行ったときのバンザイ岬と重なる。それは昭和20年の終戦のとき、島に居た日本兵は島の端まで追いやられて、そこから身を投げるしかなかったのである。そのときに「天皇陛下万歳」と叫んで海へ飛び込んだことから「バンザイ岬」という呼称が生れたようだ。慰霊碑がたくさんある。

著者はアッツ島で戦死した軍人の遺児(六歳)という視点から、終戦や戦後の家族との生活を書き記している。読んでいてまもなく、榎本さんも淀橋区に住んでいたのだ、という現実感も手伝って一書を一気に読み切った。

それは、生活感覚から書きこんでいることもある。榎本さんは役に立つ長男だったせいか、買出しなどにも母親が連れて行ったようだが、私はそうした経験がない。いつも家で留守番をしていたので、食べ物の調達がどのように行われたのか知らないのである。

そうして召集のこと、疎開のこと、自転車の覚え方などが、六歳の等身大の視点で語られている。多分、この一書は両親への鎮魂も込め込められているのだろう。

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