飛島へ

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 飛島なんていう名前の島があうことすら、去年までは知らなかった。山形県酒田市に属する小さな島。現在は小学生が数人で、中学校は閉鎖しているらしい。島に交通機関はない、というより必要がないのかもしれない。

そんな島に行く気になったのは、青葉木菟が鳴くという一言に誘われたのだ。酒田の観光協会にも飛島へもそれが目的で渡島することを伝えたが、どちらも五月頃から鳴くという返事を貰っていた。「島は静かだから、どこででも聞えます」という返事だった。

ほんとうは飛行機が早いのだが、眩暈のために医師に止められている。そんなことで、列車でいくためには、かなり時間的なロスがあったが、それも、あっという間に行けたのは、やはり気の置けない仲間との旅のせいだ。

船を下りると今夜泊まる「なごし旅館」の旗を持った人がすぐ目についた。「よろしく」と挨拶していると、となりに小柄な女性が立っていた。齋藤愼爾さんのお姉さんだった。「愼爾がお世話になっています」と挨拶されて吃驚。70歳になっても、兄弟だ。そしてよく似ている。

木葉木菟の鳴き声を聴くためにわざわざ出向いたのだが、それは期待を裏切られた。なにしろ海猫の声が昼夜絶えたことがないのである。もう一つ絶えないのは飛魚を焼く匂い。今は飛魚の揚がる時期で、毎朝5時ごろになると、仕掛けておいた網を引き揚げてくる。

その魚をその場で捌きはじめて、それから夜まで七輪で飛魚を焼いているのである。散歩をしながら、しゃがみこんでいる女性たちの輪を覗くと、「食べてみて」と焼いたばかりの熱々の飛魚を手渡される。とってもいい味だ。島の人達は、焼いた魚をカラカラになるまで干して、出汁として使うらしい。土産屋で売っていた。

夜はお魚尽くし。いやお刺身尽くしだ。最後に大きな鮑が真中に置かれた。曇っていなければ銀河も見えるに違いないが、今夜は薄曇である。9時になると消燈を促す放送が流れてまた吃驚。漁業中心の住人300人足らずの島は、朝が早いのだ。

翌朝、五時に目ざましをかけて置いたが、ぐずぐずしているうちに、船の入るところは見損なってしまった。ご主人が網をたぐりながら飛魚を外して、奥さんが直ぐに捌き始めていた。昔の写真を見るとたくさんの子供が映っていた。みんな島を離れてしまっている。

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