「現代の俳句」 評 長田群青
蝋梅の一花盗めば手の濡るる 岩淵喜代子
蝋梅は、一月の初め頃咲き出す。盛りの時は、黄の勝った独特の艶のある花をびっしりと付け芳香を放つ。花びらの・内側にある濃い紫色の花托がアクセントとなっている。句いが強いからか、鵯や目白が群れをなして蜜を吸いにやって来る。揚句は、盛りの蝋梅をそっと黙っていただいたのである。雨の後であろう。小枝を折った手に雫が罰のように降りかかった。蝋梅は大きくなる木である。垣根から道へはみ出ることもある。「一枝」となるとどうかと思うが「一花」ぐらいなら、と思った。「盗む」という思い切った言葉が効いている。 (俳句四季4月号)より