昭和17年東京生れ。「鹿火屋」所属。本書は第一句集『初幟』以後の22年間の作品を一集にしたもの。
花の城銃眼一つあけてあり
大年の夕日を通す小鳥籠
すぐ揺らぐ水に帰燕の空ありき
貝殻の砂こぼしをり梅雨の駅
燕來し道きらきらと残りけり
かさかさと鳴る紙袋敗戦日
最近は面白く面白くという志向がもて囃されているので、「鹿火屋」の叙情性などは古いと言われそうな気配がある。しかし、「面白い」はその裏に「かなしみ」の裏打ちがあってはじめて作品として成り立つのである。
川村氏は「鹿火屋」の純粋培養された作家として、叙情性の溢れた作り手である。どの句も透明感がある自然諷詠だ。