句集『嘘のやう影のやう』 評者・堀内康男
昭和十一年東京生まれ。同51年「鹿火屋」入会、原裕に師事。同54年「貂」創刊に参加、川崎展宏に師事。平成十二年同人誌「ににん」創刊代表。
句集『朝の椅子』『蛍袋に灯をともす』(第一回俳句四季大賞)『硝子の仲間』『かたはらに』『岩淵喜代子句集』。
あとがきに「いつも立冬という区切りを曖昧に過しているのは、昨日と今日の境にそれほど大きな変化を感じるわけではないからである」と主宰と共に月山に登った日の感動を述べている。齋藤愼爾氏は栞で著者を〈陸沈(孔子の言葉)〉の佳人と評す。句集名は「嘘のやう影のやうなる黒揚羽」に拠り296句を収録。
草餅をたべるひそけさ生まれけり
がりがねや古書こなごなになりさうな
雪吊の雪吊ごとに揺れてゐる
白鳥に鋼の水の流れをり
雑炊を荒野のごとく眺めけり
古書店の中へ枯野のつづくなり
発行所 四季出版