一周忌に最後の第十一句集『てんてん』を上梓。没後四年の今年は『藤田湘子全句集』を上梓した。この作家の名前とともに次の2句を思い出す人は多いはず。
愛されずして沖遠く泳ぐなり
雁ゆきてまた夕空をしたたらす 第一句集『途上』
ことに、「愛されず」の句は物語性もあり、さまざまな話題性に富む作品だったからである。平井照敏作かなと思いながら覚えていたのが次の句である。
うすらひは深山へかへる花のごとし 第五句集『春祭』
この第五句集『春祭』は「刻々と氷柱に強き燭たまる」「近づかず離れず朴の冬木あり」で終るのだが、感覚性の作品の多い句集だった。しかし、改めて今回の全句集には「うすらひの」の感覚の句はあまり見当たらない。初期の「愛されず」の思惟性とことばからの触発から「あめんぼと雨とあめんぼと」などの句へ移行しながらも、最後まで思惟的な句が貫いていた。
全句集には別冊の索引が付いている。一つは季語別、一つは作品の上五のことばからの索引である。これが別冊でついているのはありがたい。そのほうが、使いやすいからである。