夏石番矢句集『空飛ぶ法王』 --連作161俳句ーー
この1集は、「空飛ぶ法王」がテーマ。あるいは季語と置き換えてもいいのだろう。ほんとうのところ、そう断定することで、この一書の中へ入ってゆけるのである。とにかく、すべての句が「飛ぶ法王」なのだ。そうして英訳をジム・ケイシャン。
空飛ぶ法王百人寄ればただの闇
魚は氷に映る空飛ぶ法王
街は段差と老人ばかり空飛ぶ法王
こわれた橋をいくつも過ぎる空飛ぶ法王
たまには銀河で泳いでいるよ空飛ぶ法王
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現代俳句文庫『澤好摩句集』 ふらんす堂刊
鳥渡る棒高跳びの捧残り
ものかげの永き授乳や日本海
春惜しむ兎の耳の冷たさに
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現代俳句文庫『九鬼あきゑ句集』 ふらんす堂
くらやみに木は木と立てり盆踊り
十月の頭小さく水馬
新しき俎があり春の寺