序・岡野弘彦 解題・村永大和 あとがき・秋山素子
現在の俳人たちは「巳乃流」の表記でインプットされているかもしれない。今回の『天鳩』は表題にもなっているように初期創作集である。若いときの創作熱が、のちの名編集長を作り上げたのか思えるような多彩な才能が盛り込まれている一集。
1・小説集
2・短歌集
3・詩集
以上の3つの構成で学生時代からの同人誌などに発表したものの中から抜粋したものだという。『天鳩』は一章の小説の題名になっているもの。どの小説も青春性を謳歌している。
当時の心情がいちばん分かりやすいのは、3章の詩の部分だろう。若者特有の自己粉砕を試みているようにも思えた。絶望を書くのもまた青春である。その絶望感から、本物の文学が始まるのだと思う。
秋山さんは、それをバネに編集という分野に歩み始めたようだ。絶望を知らないで、文学の場にいる人は、本物にはなれないと思う。