著者略歴がきわめて簡単で、現在の所属が「句歌詩帖『草蔵』」「同人誌『大』」であることだけが書き記されている。終刊になった西野文代主宰の「文」にも参加していた。
句集の題名になったのは以下の作品
蝶ほどの脳味噌あらば飛びにけり
一集は西野主宰の自在さに影響されていると思う。何気ない日常を視野に入れながら、その表現も沈着な写生。
水底に影の伸びたる蝌蚪の紐
巻葉まだ捧のやうなる芭蕉かな
通されし部屋より夜の刈田かな
牛膝ひとに着くとき尖りたる
陽に当てし穀象逃げる逃げとほす
そうして取り合わせとも言えない偶発的な取り合わせの面白さ。
流氷に合切袋一つ持ち
蝌蚪生るる生春巻の皮透けて
黒を着ておたまじゃくしと同じなり
風船をつくときの唄忘れけり
母あれば五月の第二日曜日
けとばすに丁度いい石入学す