角川「俳句」50句応募 落選展
11月号の角川『俳句』が発売されたのが25日。すなわち50句応募の発表されている号である。それとほとんど同時に週刊俳句の「落選展」が発表されていた。
その落選した作品をそんなにタイムリーに集められるのが凄い。この素早さはインターネットの手柄である。見知った名前が幾つもあったが、実際にご縁のある上田信治さん・山口優夢さんが居たのは嬉しかった。山口さんは昭和60年生で、最年少。お二人とも是非来年も頑張って欲しい。
上田信治さんの作品を読むと、俳句は何でもない風景を言葉によって詩に転換させるものであるのが、しみじみと実感される。山口優夢さんの句には,日常の僅かな変化を見逃さない、感覚がある。
「アイスコーヒー」抄・ 上田信治
てのひらのあかるき人に小鳥来る
向かひあふ銀杏二本の散りつづく
ゆふがたを川は流れていぼむしり
さつきから犬は何見て秋の風
椎茸や人にこころの一つづつ
水涸れていつせいに人笑ひけり
よこむきに飼はれてゐたる兎かな
日永とは力の抜けてゐる河口
たくさんの人が見てゐる夏の川
あけがたの工場群よ向日葵よ
「湖上の風」抄・ 山口優夢
ぶらんこの真下ときどき水たまり
くちなはの胴の密度を感じをり
炎天やのぼれば下りる歩道橋
問診は祭りのことに及びけり
病室のみんな見てゐる秋の川
風に火のちぎれゆくなり豊の秋
それぞれに十一月の木となりぬ
耳袋線路の果てはひかりけり
凸凹に雑巾かわく桜かな
卒業や窓のかたちの日のひかり
お目にとめていただき、ありがとうございます。
こういう形で、思わぬ方に読んでいただけることも、「賞」の効用かもしれません。
選考座談会で、減点句とされていた句を選んでいただき、嬉しく混乱しております(もちろん嬉しい方が大きいです)。
あらためて、つくづく、ありがたく。
日常の何気ない風景を詠めるのは、さすがです。