辻村麻乃句集「プールの底」角川書店刊
山口紹子句集「LaLaLa」文学の森刊
この二冊とも、身近な人が装丁している。辻村さんは友人の絵。ブルーの表紙の真中に田園を走る電車の絵を小さく収めているのが爽やかである。この一集に子育てが詰まっているといってもいい。
しつかりとおままごとにも冬支度
この句がその面目躍如の感。
摘むうちに少女消えゆく蛇苺
いつからか叔母が嘘つく花曇り
偶数になつたら晴れる草雲雀
裸子を追ひかけ雲のタオルかな
山口さんの句集は、一瞬絵本かとおもうような装丁で、手にのるハガキ大の句集。薄紫の地に鉛筆に跨った魔法使い。しかもこの句集は所属も略歴もない。もちろん住所も年齢もない。後書きによれば、何も書かないことが希望だったようだが、それではあまりに失礼かとも思って、という書き出しで、句集を作る経緯を語っている。それによれば遺句集にならないようにという家族の言葉に背中を押されたようだ。爽やかな覚悟と意思を持っている。
陽炎をよく噛んでゐる駱駝かな
特に掲出の句の駱駝の捉え方のうまさに感心。
おぼろ夜のおもはず白き脹らはぎ
いちまいの空干されをり野分あと
寝返りてこの世に戻る虫時雨
2006-09-16 08:52 nice!(0) トラックバック(0)